#5 「月が綺麗ですね」の意味と返し方に悩んだ夏の終わり
繁忙期もピークを迎え、瀕死のななめです。
恋人との夜の散歩の帰り道、空に浮かぶ月があまりにも綺麗だったので備忘として書いています。
夏目漱石が英語教師をしていた頃、「 I love you」を「我、君を愛す」と直訳した生徒に対して「日本人はそんなこと言いません。月が綺麗ですね、とでも訳しておきなさい」と指摘した逸話、有名ですよね。
「あなたのことが好きです」という一番伝えたいメッセージの裏側で、「あなたの顔が見れない」というシャイな部分が詰まっている非常に情緒あふれる言い回しだなと思います。
でも、実際に使うかって言われたら、こういう言い回しって使わないじゃないですか。
いざ言おうと思って仰々しくいう言葉でもないし、月が見えないとそもそも言えないし(?)
でも、散歩帰りに二人で夜道を歩いている中で、ふとついて出たんです。
「月、綺麗だねえ」って。
繁忙期で中々会えない生活。
忙しさに揉まれて気持ちが中々休まらない日常で、二人が月を見上げているこの瞬間が永遠に続いたら、と思いました。
「月が綺麗ですね」に詰まっているメッセージは多いなと思います。
あなたのことが好きです。
とても顔を見ることができないけれど。
私の横にあなたがいて、同じものを眺めている。
この幸せが続けばいいのに。
我慢を美徳としてきた日本は嫌だなと思いますが、言わない美学は好きです。
同性の恋人であってもこんなふうに思ったことはなかったのに。
私が好きになるのは、やはり性別ではなく、相性や人なんだろうなと漠然と感じます。
因みに、「月が綺麗ですね」の言葉の返し方ってご存知ですか。
「死んでもいいわ」らしいです。
ロシア文学の「片恋」作中の「Yours.(あなたのもの)」というフレーズを「死んでもいいわ」に訳したらしいです。
実際に使ってみたいところですが、「死んでもいいわ」って中々この背景を理解していないと重く受け取られそうですよね。
他にも、
「月はずっと綺麗でしたよ」
→ずっとあなたが好きでした
「手が届かないから綺麗なんです」
→好意がありますが、私には手が届きません(叶わぬ恋)
「そうですね」
→気づかないフリをして保留にしてしまう
もあるらしいです。
個人的に面白いなと思ったのは、「明日の月は綺麗でしょうね」は、犯行声明的な意味になるらしいこと。
明日の月が綺麗なのは、あなたがいなくなるから、ということのようです。
秋が近づいて、もうすぐ十月ですね。
忙しさの合間を縫って、一度誰かと空を見上げてみませんか。