ななめちゃんとの内緒話

最強にして最高

同性愛作品から愛について|きみはポラリス|三浦しをん

ななめちゃんの読書感想文①

 

三浦しをん「きみはポラリス」。

 

様々な恋の形を描いている恋愛小説集ですが、その中でも特にお勧めしたいのが、

作品の最初と最後、

 

 

・「永遠に完成しない二通の手紙」

 

・「永遠に続く手紙の最初の一文」

 

です。

 

小説はあんまり読まない!という方にこそお勧めしたい短編です。

会話のテンポが良いので頭の中に映像が思い浮かんできます。

 

私自身セクシャルマイノリティの一人なので、そこの視点も交えながら本作の要点と魅力を語りたいと思います。

 

 

永遠に完成しない二通の手紙

 

寒いとある日の昼下がり、主人公・岡田勘太郎の家に、幼馴染の寺島良介が上がり込んできます。

なんでも、合コンで惚れた女性に贈る、ラブレターの執筆を手伝って欲しいんだとか。

寺島の底抜けな明るさと、その単純さから女性に振り回されてきた姿を一番近くで見てきた岡田は何を思うのか。

 

寺島。俺の手紙は、永遠に投函されることはないんだ。

それは俺の心のなかで、ひそかに、囁くように、綴られていくだけなんだ。 

 

 

永遠に続く手紙の最初の一文

 

時は冒頭から少し遡り、二人は高校の体育祭中に体育倉庫に閉じ込められてしまう。

岡田は静かにポケットの中の携帯の電源を落とした。

 

 体育倉庫で起こるとある出来事をきっかけに、岡田は寺島と過ごした幼い日を思い出す。

岡田はいつも、寺島に対して肝心な言葉を伝えられないのだ。寺島が求める言葉も、寺島が決して求めないどころか夢にも思いつかないだろう言葉も、すべて岡田のなかで胆石みたいに凝ったままだ。

 

ななめの独り言

 恋はいつだって秘め事の連続だった。

自分の心の内を隠して、現状維持を貫き、言い聞かせる。

 

このままが一番いい、このままで、もう少しだけ。

そうして膨らんだ秘め事は、いつしか罪悪感に変わっていく。

 

「私が幸せにあげたいのに、この人を幸せにできる人は私じゃない」

 

相手の幸せが何かなんて分かるはずもないのに、なんて傲慢な悩みだろう?

 

苦しい思いこみと優しさでパンパンに膨れ上がった秘め事を、

どうやって爆発させずにいられるだろう。

 

答えはもっとずっと、単純なのに。

 

ごめんな寺島。俺はいつもこうだ。友達のふりをして、友達じゃない。お前の幸せを願ったことなんか一度もない。

 

私は弱い人間なので、いつだって余計なことを考える。

未来や世間体や、周囲の聞こえない声に耳を傾ける。

 

本当はそうじゃない。

私が私を許すことで、世界も思いも、もっとシンプルになっていくはずだ。